
はじめに
今回は、線状異物の摂取により小腸が広範囲に収縮し、複数箇所で腸管損傷を認めた症例をご紹介します。
線状異物は、糸や紐などの細長い異物を誤って飲み込むことで発生します。異物の一部が舌の付け根などに引っかかった状態で腸管へ移動すると、腸が異物に沿ってアコーディオン状に収縮し、腸管の損傷や穿孔につながることがあります。
検査
エコー検査およびCT検査を実施したところ、小腸が全体的にアコーディオン状に縮れている所見を認めました。

線状異物による消化管閉塞・損傷が疑われたため、外科的治療を行うこととしました。
手術
開腹下で消化管を確認したところ、舌根部から盲腸手前まで線状異物が連続して存在していました。


小腸は全体的にコルゲート状に収縮しており、線状異物による強い牽引・圧迫が疑われる状態でした。

https://www.eug.jp/elms/wp/wp-content/uploads/2026/10/image-4-562×750.png (手術画像注意)
異物を安全に除去するため、小腸3箇所に小切開を加え、さらに胃切開を行い、線状異物を摘出しました。
腸管を詳細に確認したところ、
・線状異物が腸管壁を貫通して外側へ出ている箇所:1箇所
・線状異物によって腸管が切断されていた箇所:2箇所
を認めました。


https://www.eug.jp/elms/wp/wp-content/uploads/2026/10/IMG_1096-750×563.jpeg (手術画像注意)
https://www.eug.jp/elms/wp/wp-content/uploads/2026/10/IMG_1095-750×563.jpeg (手術画像注意)
一方で、腸管に明らかな壊死は認められなかったため、腸管切除・吻合は行わず、損傷部の処置を行いました。
処置後にはリークチェックを実施し、問題がないことを確認したうえで、PDS 5-0による補強を行いました。
その後、腹腔内を生理食塩水で十分に洗浄し、P-Vacを設置して閉腹しました。
術後経過
術後は大きな問題なく経過し、食欲も良好でした。
P-Vacからの貯留液も少量で推移したため、術後3日目にP-Vacを抜去しました。その翌日に全身状態が安定していることを確認し、退院となりました。
退院後も経過は良好で、術後1週間の再診時にはエコー検査を実施し、問題がないことを確認しました。抜糸を行い、その後の治療を終了しました。
おわりに
線状異物は、一般的な異物と異なり、異物の一部が消化管内に引っかかった状態で腸管が引き寄せられることで、腸管の収縮や損傷、穿孔を引き起こすことがあります。
今回の症例でも、小腸全体がアコーディオン状に収縮しており、複数箇所で腸管損傷を認めました。
線状異物は、症状が進行すると重篤な腸管損傷につながる可能性があるため、異物の摂取が疑われる場合や、食欲不振・嘔吐・腹痛などの消化器症状がみられる場合には、早期の画像検査・診察が重要です。
今回の症例では、腸管に壊死を認めなかったため腸切除を回避することができ、術後も良好に回復することができました。