泌尿器

猫の尿管結石

14歳、日本猫

猫の尿管結石の症例です。

急性の食欲不振で来院され当院にて検査を行ったところ、血液検査で重度の腎数値上昇・エコー検査では片側の腎臓の腎盂拡大が認められました。

エコー検査(腎臓)

拡張した腎盂・尿管の先には2mmほどの結石が閉塞していました。

猫の尿管閉塞には、「結石」などにより物理的に閉塞してしまうもの、炎症や刺激により尿管がダメージを負うことにより壁が狭くなってしまう「線維化」などいくつかのパターンがあります。

その中で一番多いものが「シュウ酸カルシウム結石」と呼ばれる石による閉塞です。

結石の詰まり方や、場所、複数か否か、腎臓にある結石の有無など、様々な要因によってそれぞれ治療適応が異なってきます。

当院で最も多い治療パターンは、

  • 尿管の切開・縫合と腎ろうチューブ設置
  • SUBシステムを用いたインプラントによる治療
  • 尿管と膀胱の吻合術と腎ろうチューブ設置

などになります。

今回は結石が2mmと比較的大きかったこと、他に石が認められなかったことから、「尿管切開+腎ろうチューブの設置」による治療を行いました。シンプルに、結石直上の尿管を切開・縫合する術式です。

術後は腎臓から体外に出ていくようなチューブ(腎ろうチューブ)を設置することで、一時的な尿の迂回路を作ります。これにより手術した尿管に尿が流れて炎症や尿漏れを引き起こすことを防ぎます。

術後は数日間(平均2~3日)腎ろうチューブを設置し、尿管の傷が治ったことを確認したらチューブを抜去します。

術後は血液検査の数値も顕著に改善し、元気に退院してくれました。

尿管閉塞を起こしてしまうと、起こった腎臓には大きな負荷がかかります。閉塞した状態で時間が経つと腎臓の機能はどんどん失われていき、場合によっては手術をしても元の機能が戻らないケースもあります。

片側の尿管閉塞の際にもう一方が正常腎の場合、正常腎の働きにより腎機能低下は隠されてしまう(血液検査の数値で異常が出ない)場合がありますので、検査が苦手な若い猫ちゃんでも日頃から可能な限り画像検査はするよう心がけています。

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