プロフィール
ミックス犬、5歳、未避妊雌
主訴
数日前から活動性と食欲の低下、嘔吐、下痢などの症状
診断
初診時の検査では、体内で強い炎症が起きていることを示す炎症マーカー(CRP)の上昇が認められました。超音波検査では子宮内腔の拡張と液体貯留が確認され、この時点では「子宮内膜炎または子宮水腫、子宮蓄膿症」が疑われました。
当初は抗生剤による内科治療を開始しましたが、その後、39.5℃の発熱と体調悪化が見られました。「子宮蓄膿症」を強く疑い、早期に手術を行うことになりました。

手術
子宮蓄膿症の治療として卵巣子宮摘出術を行いました。通常の避妊手術よりも術創は大きくなり、膿が腹腔内に漏れている場合は、洗浄を行います。当院では超音波凝固切開装置を使用することで安全かつスピーディーに手術を行うことが可能です。

blob:https://www.eug.jp/74965176-cfda-45ab-a32e-f6be886089c7 (手術画像注意)

https://www.eug.jp/elms/wp/wp-content/uploads/2026/07/image-10-589×750.png (手術画像注意)
治療経過
子宮蓄膿症は、増殖した細菌が出す毒素によって臓器障害や敗血症を引き起こすリスクが高く、術後も油断はできません。本症例では術後2日間の入院管理を行い、抗生剤と抗炎症薬の投与を継続しました。幸い、懸念された臓器障害も見られず、体調は速やかに回復。1週間後の再診では、初診時の症状はすべて改善し、元通りの元気な姿を見せてくれました。
子宮蓄膿症の治療において、最も確実な方法は原因を根本から取り除く「外科治療(卵巣子宮摘出術)」です。今回のケースのように、内科治療での反応が乏しい場合や急激に状態が悪化する局面では、迅速な手術の決断が生死を分ける鍵となります。
また、子宮蓄膿症は避妊手術さえ受けていれば防ぐことができる病気です。そのため、若齢期での避妊手術は、将来の大きな病気のリスクを回避するための極めて有効な手段となります。
中齢期以降になり、手術のタイミングを逃してしまったと感じている方や、健康な体にメスを入れることに不安を抱き、手術に踏み切れず迷われている飼い主様も少なくありません。
もし避妊手術を行わない選択をされる場合は、以下の点に留意することが重要です。
・発情周期(ヒート)を正確に把握する
・定期的な健康診断(特に超音波検査)を欠かさない
これらを徹底することで、もしもの異常を「早期発見・早期治療」につなげ、大切な家族の健康を守ることにつながります。