骨盤骨折

骨盤の骨折の多くは交通事故により発生します。骨盤は箱状の骨であるため、一箇所だけでなく複数箇所での骨折が起こることが多く、仙腸関節脱臼(骨盤と背骨の接合部の脱臼)なども併発することがあります。
骨盤の骨折を起こす症例では、腹部臓器(腎臓や膀胱、小腸などの内臓)にも損傷が認められることがあり、注意が必要です。
また、通常は他の骨折よりも周囲の筋肉の損傷が激しく、痛みも強いことが一般的です。
骨盤骨折は複雑な骨の骨折のため、CT検査にて骨の状況を確認することが、その後の治療のためにも有効です。

症例1

腸骨骨折+仙腸関節脱臼
患者:ミニチュアダックスフンド 12歳 5kg
インプラント:ALPS6.5  2.7mm/2.0mmラグスクリュー
原因:交通事故による骨折
骨盤は足と背骨をつなぐ大切な骨で、この骨折により足に力をかけることができなくなり、放置すると骨が変形してしまい、排便困難なども起こるため基本的にはほとんどの症例で手術が必要です。
今回はCT検査の結果、右の腸骨体、恥骨骨折と、左の仙腸関節脱臼が認められました。
一部お腹の中にも軽い損傷が疑われたので二日間内科治療を行ったのちに手術を実施しました。

症例2

腸骨骨折粉砕+仙腸関節脱臼
患者:日本猫 約8歳 4kg
インプラント:ALPS6.5 ALPS4 ラグスクリュー(2.4mm/2.0mm)
原因:交通事故
骨盤の粉砕骨折と仙腸関節の脱臼を伴う症例でした。
粉砕骨折は股関節部位まで及んでおり、この部位を適切に治さないと将来的な痛みにつながります。股関節部位を整復し、粉砕骨折で力がかかることが想定されたので二枚のプレートにて固定を行いました。

症例3

坐骨骨折 プレート
患者:日本猫 3歳 3.5kg
インプラント:ALPS5
落下による骨折
骨盤骨折は通常は背骨・腸骨・股関節という足からの力を背骨につながるラインを治療すれば歩き方は改善するため、坐骨や恥骨といった他の部位は骨折していても直さない場合が多いのですが、今回は股関節部位よりも後ろの坐骨部位の骨折でしたが、坐骨に付着する筋肉により骨が引っ張られ、強い痛みと歩行異常を起こしていたため手術による固定を行いました。術後すぐに痛みと歩き方の異常はなくなりました。