門脈シャント

門脈シャント(門脈体循環シャント)とは、門脈と別の血管(後大静脈、奇静脈など)との間に異常血管(シャント血管)が形成される病気です。
門脈とは消化管と肝臓をつなぐ血管であり、消化管で吸収された栄養と毒素の処理は肝臓が担っています。
その門脈に肝臓を迂回し全身に直接流入するシャント血管が形成される結果、肝臓に栄養を送ったり肝臓で毒素を代謝する事ができなくなり、進行性の肝不全・毒素によるけいれん発作・成長不良などを起こし、致命的になる事もある病気です。

原因

先天性と後天性とに分かれます。先天性の場合は、産後に消失するはずの胎児期の血管が消えずに残るもので、手術適応になる事がほとんどです。後天性の場合、肝硬変などの重篤な肝疾患の影響で二次的に数本以上の血管が形成できるもので、内科治療が適応になります。

症状

同腹の個体よりも小さい体格や成長不良・削痩、食後の発作やふらつきなどが典型的な症状ですが、食欲不振や嘔吐、膀胱結石等も併発する事があります。症状が進行すると、肝不全に伴う低血糖発作・低蛋白による浮腫や胸腹水などが現れ、最終的には肝硬変により命に関わります。

診断

・血液検査:肝数値の上昇や、食前/食後での総胆汁酸・アンモニアの上昇を確認します。
・画像診断:腹部エコー・造影レントゲン・CTによるシャント血管の描出が目的ですが、当院では最も信頼性の高いCT装置により診断した上で手術計画を立てています。

治療

①内科治療
肝保護薬や肝性脳症を緩和する薬剤などの使用です。
後天性の場合は治療の主軸になりますが、 先天性の場合は緩和的であり手術が通常必要になります。
②外科治療
手術によりシャント血管を閉塞する事が目的であり、根本治療に当たります。
当院ではCT装置を用いて確実な診断と綿密な手術計画のもとに手術を実施しており、術中・術後のチェックもCT装置にてフォローアップしております。
術式には結紮術、アメロイドコンストリクター法、セロファンバンド法、コイル塞栓術などがあります。
当院では確実な血管の閉塞と細やかな血圧の調整が可能なため、主に結紮術を選択しています。
もちろん病態によりアメロイドコンストリクター法やセロファンバンド法が適切であると思われる場合にはこれらを実施する場合もあります。
手術が適切に行われれば神経症状などの門脈シャントによる症状を減らす・なくす事が可能で、肝機能が改善され完治も十分期待できます。