橈尺骨骨折

前腕の骨折で、特に小型犬・超小型犬などでは落下などにより最も起こりやすい骨折です。
通常は橈骨/尺骨の両方の骨折が起こることが一般的ですが、それぞれ単独での骨折が起こることもあります。
特に多い、遠位骨折(手首に近い方での骨折)では少しのズレが足の変形につながってしまうため、通常は適切な手術が必要です。
また、この部位は周囲の組織が少なく、血流が乏しい骨のため、他の骨折と比べても癒合不全(骨がくっつかない)が起こりやすいので、適切な治療の選択が重要です。

症例1

橈尺骨骨折 骨幹部単純骨折
患者:トイプードル 10か月 2.5kg
使用インプラント:fixin micro
原因:落下による骨折
コメント:一般的な骨折ですが、小型犬で骨が細い。ただし元気な若い子でよく動く子であったため、ロッキングプレートのfixin micro(1.7mmスクリュー)を使用しました。

症例2

橈尺骨骨折 遠位端骨折
患者:ポメラニアン1歳 2.0kg
使用インプラント:LCP1.5mm
原因:衝突による骨折
コメント:遠位部の骨折は骨がずれやすく、きちんとした治療を行わないと足先の方向が変になってしまい、その後の生活に支障をきたします。
中央での骨折に比べるとスペースが少ない分、普通のプレート1枚では治療が難しい場合があり、コンディラープレートという、片方が横に2本のスクリューが打てるようになっているプレート(コンディラープレート)で固定を行いました。

症例3

橈尺骨骨折 癒合不全
患者:トイプードル 4歳 2.3kg
インプラント:ALPS4×2
原因:落下による骨折
コメント:骨折を他院にて治療を行ったものの、4か月たっても骨がつかない癒合不全の状態となっていた例です。
骨がやや萎縮しているもののその範囲は小さかったので、萎縮している部分の骨を少し削り、プレート2枚で強固に固定を行いました。その後3か月ほどで充分な癒合が認められたので、骨がこれ以上細くならないように内側のプレートのみを抜去し、治療を終えました。

症例4

肘頭成長板骨折
患者:ミックス犬 10か月 3.2kg
使用インプラント:テンションバンドワイヤー(ワイヤー22G、ピン1.0mm×2)
原因:足を引っ掛けて骨折
コメント:前足の骨で成長期に起こりやすい骨折の一つに、肘の部位の骨折があります。この部位は上腕三頭筋という強い筋肉の付着する部位で、落下などで引っ張る力がかかり、剥離骨折が起こります。
ひっぱる力と拮抗するように、ピンとワイヤーを用いたテンションバンドワイヤーという固定法により固定を行うのが一般的です。

症例5

尺骨近位骨折
患者:ミニチュアダックスフンド 13歳 6.1kg
使用インプラント:LCP2.0
原因:落下による骨折
コメント:尺骨単体での骨折は比較的まれですが、肘側に近い部分での骨折は時々見られます。肘よりも先の骨折であれば包帯などでも治療が可能ですが、今回は肘の関節にギリギリ被る部位での骨折であったためきちんとした固定が必要であると判断してプレートによる固定を行いました。