症状・症例

ケース14

症例:慢性ヘルニアによりふらつき・麻痺が起きていた症例  トイプードル 11歳

5年ほど前に一度腰の痛み、ふらつきを起こしており、その際にMRI/CT検査を行い慢性の椎間板ヘルニアが多数見つかっていました。
その際には内科治療を行い、症状は改善していたのですが今回も急に腰痛および右後肢の麻痺が認められ、明らかなふらつく歩行が確認されました。
神経学的検査でも右後肢のUMN性の麻痺(反射が亢進し、突っ張るような麻痺)が認められ、ミオクローヌス(筋肉の連続的な収縮)も確認されました。
脊髄の病気が強く疑われたため、画像検査を行いました。

【MRI検査】
今回も慢性的な椎間板ヘルニア(ハンセン2型)が多数確認されました。
T13-L1の椎間板ヘルニア重度であり、前回に比べ圧迫の度合いが明らかに増加しており、この部位のみ造影剤による増強がわずかに認められました。

【CT検査】
MRI同様に多発性の椎間板ヘルニアが認められましたが、T13-L1部位では脊髄造影のラインも薄くなっていました。

【診断】
慢性的な椎間板ヘルニア(ハンセン2型)の多発
ただし、T13-L1は他に比べ圧迫が重度であり、MRIで造影剤による増強が認められ、CTでの造影剤のラインが消失していることからも、この部位では炎症も伴っていることが推測され、今回はこの部位が原因で症状を起こしている可能性が高いと考えられました。

【治療】
通常急性の椎間板ヘルニアと異なり、慢性的な椎間板ヘルニアで手術を行うことは少ないのですが、今回のように明らかに圧迫が重度で炎症を伴っており、その部位が症状を起こしている可能性が強い場合には手術も適応となります。今回の場合も症状が再発しており圧迫の度合いも進行していることから手術による治療を選択しました。
手術は通常の椎間板ヘルニアと異なり、部分椎体切除を行いました。
左側の椎間板物質の部分から脊髄の下側の脊椎の一部を削り、脊髄を下から押す椎間板物質を少しずつ取り除き脊髄の圧迫を減らしました。
今回は圧迫が強く、削る部分が大きくなった事と、患者の性格がアクティブであったため念のためにこの部分でプレートによる椎体の固定も行いました。
術後のCTにてすべての椎間板物質は取り除けていませんが、脊髄の圧迫が軽減しているのが確認できました。

■術後2日
術直後より神経症状の悪化は認められず歩行は可能で、術後2日目では軽度の腰の湾曲はあるものの、神経学的検査にて麻痺は認められなくなりました。

■術後7日
引き続き麻痺は認められず、腰の湾曲も軽減して一般状態も良好であったので退院しました。

■術後14日
ふらつきや腰の痛みはほとんど認められず、傷口も良好であったので抜糸を行いました。

■術後30日
引き続き歩き方は良好で、レントゲンにて手術部位が問題ないことが確認できました。少しずつ散歩に出してもらうこととしました。

■術後60日
明らかな異常は認められず、治療終了としました。
この後は通常通りの生活を送ってもらっています。