症状・症例

ケース5

症例:ミニチュアダックスフンドの避妊雌 11歳

■第0病日
前日より両後肢の麻痺があり、かかりつけの動物病院での内科的治療では改善しなかったため検査を勧められたという主訴で来院されました。
来院時には自力で歩行できず、神経学的検査を実施したところ後肢の姿勢反応の消失、浅部痛覚の消失、深部痛覚の消失が観察されました。後肢の反射は正常でした。
以上の徴候から、後肢UMNサインと判断しました。(UMN:上位運動ニューロン)
その他の身体検査や血液学的検査から、胸腰部の疾患を疑い全身麻酔下でのMRI/CT検査を実施しました。
MRI/CT検査において、第13胸椎から第3腰椎にかけて軽度から中等度の圧迫所見が認められたため、以上の画像所見と症状から胸腰部の椎間板ヘルニアグレード5と診断しました。
検査終了後すぐに手術室へと運び、片側椎弓切除術を行いました。手術では椎弓と呼ばれる背骨の一部分を取り除き脊髄にかかる圧力を逃がす減圧と、神経を圧迫している椎間板物質を取り除きました。脊髄の色に異常は見られず、一部線維輪に肥厚が見られました。

■第1病日
前日まで消失していた両後肢の深部痛覚、浅部痛覚に改善が見られました。

■第3病日
姿勢反応はまだ回復しないものの、深部痛覚、浅部痛覚はほぼ正常レベルまで回復しました。

■第13病日
姿勢反応がほぼ正常まで回復し、ふらつきながらも自力歩行できるようになってきました。リハビリを開始して8日目でした。

■第15病日

日に日に歩行状態が良くなっている様子だったので、退院をしました。

■考察
本症例は生死に関わる椎間板ヘルニアグレード5であったにもかかわらず、比較的早い段階で検査・手術を受けることができたため、入院中に歩行できるまでに回復可能であったと思われます。

■退院後113日目の歩行