動物病院よもやま話

1. おいしいおやつは、ほどほどに。

おいしいおやつは、ほどほどに。

最終更新 2019.12.9

奈良院からのお知らせ

動物病院よもやま話

1. おいしいおやつは、ほどほどに。

ユナイテッド奈良あやめ池動物病院には毎日、様々な動物たちが不安そうな表情の飼い主さんに抱きかかえられてやってきます。さて本日の患者さんは?

さあ、診察を始めましょう。
まずはカルテの確認です。本日の患者さんはトイプードルのSちゃん。体重は2kgほどで小柄です。30分程前に大好きなささみジャーキーを与えてから、突然口をひどく気にして前足でかきむしるようなしぐさをするとのこと。
飼い主さんはのどをつまらせているのではないかと心配のご様子。
診察台の上でSちゃんの様子を拝見するとかなりよだれが多く、口の中がひどく気持ち悪いのかして半開きのままです。しかし幸い窒息や呼吸困難を起こしている様子はありません。

この症状はもしや…、と思い飼い主さんに質問してみます。
私「ささみジャーキーは毎日与えているのですか?」
飼い主さん「はい、好物なので毎日3本与えます。」
私「ところでそのささみジャーキーの長さはどれくらいですか?」
飼い主さん「スティック状で10cmくらいあり、そのままでは長いかと思い半分くらいに切り与えています。」

ここまでの診察である確信を得た私は動物看護師に鉗子(ものをつまむための医療器具の一種)を持ってきてもらいました。さらに動物看護師に手伝ってもらいSちゃんの口を大きく開けてのぞきこみ、えいやっと気合一発、鉗子であるものをつまみ出しました。

みなさんご想像のとおり、あるものとはスティック状のジャーキーです。長さは5cm程でしょうか?私の予想通りに上あごの左右の奥歯の間に横一文字にがっちりはまって、Sちゃんかわいそうに自分ではどうにもとれなくなってしまっていたようです。

例えばみなさんもチューインガムやおもちなどを食べていて上あごに張り付いてしまい,
気持ち悪い思いをしたことはありませんか?そんな感じですね。
無事に上あごに張り付いていたささみジャーキーを取り除くと、Sちゃんはやれやれという感じで一息ついた様子。きちんと口も閉じるようになり一安心。

実はこのようなケースはまれではありません。今回は不幸中の幸いで、左右の歯の間に挟まって上あごに張り付いていただけですが、運が悪いと細長いジャーキーは飲み込みきれず、もっとのどの奥や食道に引っ掛かってとれなくなったりもします。
そうなると全身麻酔のうえ、内視鏡でささみジャーキーをつまんで引っ張り出したりすることもあります。また治療が遅れると食道に穴があいたり、時には気道が塞がってしまい実際窒息死するケースも見受けられます。

ささみジャーキーに限らず最近の犬用のおやつはとてもおいしい味に作られています。(当たり前ですがおいしくないおやつでは犬も食べませんし、誰も買いませんものね。)
でもあまりにおいしすぎると、しっかり噛まずに急いで食べてしまいやすいのはヒトも犬も同じこと。しっかり噛まずに飲みこもうとすると、のどに詰まるなどのトラブルは当然増えます。かと言って犬に「ゆっくり噛んで食べなさい。」と言っても聞いてくれるはずもなく。
事故につながらないようにおいしいおやつ程、できるだけ小さくして(理想は1cm角以下)ゆっくり少しずつ与えましょう。最近の小型犬は胃腸が弱い傾向もあるようで、ジャーキー類やガムなどの硬いおやつを日常的に与えすぎると消化不良から下痢や嘔吐をする子もよく見受けられます。いずれにしてもおいしいおやつや硬いおやつは、ほどほどに。

なお今回のSちゃんは特定の患者さんのお話ではありません。フィクションです。しかし残念ながらSちゃんのような経験をしたわんこは実際にたくさんいます。飼い主様の正しい知識と少しの気遣いでSちゃんのような大変な経験をするわんこが少しでも減ることを切に願います。

◇ 病院基本情報

ユナイテッド奈良あやめ池動物病院
〒631-0843
奈良県奈良市疋田町2丁目1−19-1
0742-51-1444
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