症状・症例

ケース13

症例:脊髄腫瘍により歩行困難となっていた症例  ボストンテリア 10歳

半年前に足の麻痺が始まり、少しずつ進行してしまい歩くことができなくなってしまったとのことで来院されました。当院に来院時にはほとんど歩行ができない状態で、四肢に重度の神経異常が認められました。
ホームドクターで診察をしてもらっており、レントゲン検査では異常は認められず、薬やサプリメントでの治療を行っていましたが改善せず、ゆっくりと症状が進行してしまったとのことでした。飼い主様は椎間板ヘルニアと考えていたようですが、ゆっくりとした進行であったため、腫瘍なども疑い精査を行うことにしました。

【MRI検査】
第1-2頸椎部の脊髄右側に腫瘤病変が認められました。腫瘤はT2強調画像で高信号で造影剤にて強く増強されており、脊髄腫瘍が強く疑われました。

【CT検査】
第1-2頸椎部の脊髄右側に、血管造影にて増強される腫瘤病変が認められました。

【診断】
第1-2頸椎部の脊髄腫瘍が強く疑われました。画像の所見や、経過が長いことから髄膜腫などの腫瘍が一番に疑われました。

【治療】
脊髄腫瘍は一部を除いたほとんどが抗がん剤のみでの治療が困難であり、腫瘍が大きくなることで脊髄が圧迫されて症状が起こります。残念ながら手術のみでは完治に至らない場合が多いですが、症状の改善のためには手術が必要な場合が多く、今回のように首の脊髄腫瘍の場合には進行により呼吸困難などにつながるため、命を救うためにも手術が必要となります。
大きな手術となるため、飼い主様も迷われましたが、何度も相談し手術による摘出を行うこととしました。
手術は第1−2頸椎右側の片側椎弓切除を行い、硬膜内に腫瘤が認められたので硬膜の切開を行い腫瘍の摘出を行いました。
病理検査の結果「髄膜腫」と判断されました。

■術後3日
術後翌日から少しずつ神経機能の改善が認められ、術後2日で自力で立つことが可能になりました。
その後、術後3日でふらつきながら歩行が可能となりました。

■術後7日
さらに神経機能の改善が認められ、歩行状態も徐々に改善しました。
一般状態も良好であったので、術後7日で退院としました。

■術後13日
自宅ではそれほど不都合なく生活できており、家の中でよく歩き、歩き方も日に日に良くなってきているとのことでした。

■術後50日
右後ろ足のわずかな麻痺は残りますが、歩き方は正常に近くなり、快適に散歩もできるようになりました。